こんにちは、エンジニアの綿貫(@watakemi725)です。
今回は、会社員をしながらヨーロッパのアーティストインレジデンス(EMAP ※後述します)に参加してきた滞在記をまとめられたと思います。滞在記となるため、技術的な内容は少ないかもしれないです。多少はあるかも。
事の発端
それではなぜアーティストインレジデンスに参加することになったのか。それはプライベートの時間で大学院の同期&先輩と制作した『かぞくっち』というデジタル人工生命NFT作品がきっかけとなっています。
かぞくっち (2022) 菅野創+加藤明洋+綿貫岳海 「かぞくっち」は、群ロボットを宿とした生殖する人工生命のプロジェクトです。1つの箱庭空間の中で、リアルな移動式の”家”と、各家内部に生息するデジタル人工生命体「かぞくっち」の家族によって構成されています。「かぞくっち」は、一体一体がNFTに各々の名前や生年月日、家系までが紐づいています。同じ家で生まれたかぞくっちはみな同じ名字とそれぞれの名前を持っています。生態系の情報をブロックチェーンに刻むことにより、デジタルなのに、リセットできない生命を描こうとしています。
こちらの作品を2021年の冬頃から制作を始め、いくつかの展示を通してブラッシュアップを重ねてきました。
現在は新宿初台にあるNTT-ICCにて3/5まで展示されているので、お時間のある方は是非お越しください。
ブラッシュアップを重ねていく中でEMAP(European Media Art Platform)への応募を検討する話がチーム内で浮上しました。
EMAPとはEUの「Creative Europe」プログラムの支援を受けて、ヨーロッパ近郊でメディアアートやデジタルアート、バイオアートのレジデンスを実施している団体です。今回のレジデンスでは以下の項目が約束されていました。
- 2ヶ月のレジデンスプログラムへの参加。
- 申請アーティストへの助成金4000€。
- コラボレーションアーティストへの助成金2000€。
- プロジェクト予算4000€。
- 主催者が提供する宿泊施設。
- 1000€を上限とする旅費。
- 受入機関の技術設備やメディアラボの無料利用。
またEMAPの応募対象者はEUの居住者またはEU加盟国の納税者が必須ということだったのですが、チームメイトで大学院先輩の作家菅野さんはベルリン在住であったため申請が可能でした。私と大学院同期の加藤明洋さんはコラボレーションアーティストとして参加、という座組みで応募を行いました。
無事にこちらのプログラムへの採択が決まり、滞在先はクロアチアへ決定しました。(いくつか滞在先の候補はありましたが作品制作に適している施設など諸々の条件を考慮してクロアチアとなりました。)
さて会社になんて言おう
レジデンスの採択された時点で僕の中では大きな悩みがありました。どう会社に伝えるのか。2ヶ月弱も休めるのか。休職ってできるのだろうか。
ぷるぷると震えながら人事の中村さんに相談してみました。
…
「良いじゃん、行ってきなよ!」
…
…
なんと…
想像もしなかった言葉が放たれました。僕が一週間夜も眠れず、食事もろくに喉を通らない悩みを、一言で爽快に人事の中村さんは吹き飛ばしてくださいました。
というのは大きく盛ってしまいましたが、会社としては基本的に応援したいという姿勢でした。もちろん案件稼働の調整や、同僚の協力など、多くの方に社内調整していただいた上で、今回の渡航は実現することができました。
弊社には休職制度がありますが、今回の私の渡航に関しては条件がいくつか満たせなかったため、休職することはできませんでした。ただし、有給をうまく調整することで、擬似休職のような動き方をすることができました。その時点での有給は使い切ってしまいましたが、良い有給の使い道じゃないか、と中村さんは微笑んでいました。
お金をどうしよう
今回EMAPへの参加はコラボレーションアーティストとしての関与であったため、滞在場所は負担していただけるものの、渡航費などに関しては自力で支払う必要がありました。助成金などいくつか応募をかけてみましたが、結果は厳しく、無助成金で日本を後にすることになります。
バタバタと渡航準備をして、いざ飛行機へ17時間のフライトです。
…と、今回はここまでです。次回は「クロアチア滞在編」になります。
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アーティストインレジデンス(EMAP)滞在記 -滞在編-