エンジニアの綿貫です。
今年の6/10から3日間、東京都渋谷区にあるhotel TRUNK 内のギャラリーROOM 101にて WORRA EXHIBITION Vol.01 “WANNA WORRA?”が開催されました。
本展示において私が制作した作品について、今回の記事ではまとめられたらと思います。
(本展示会やWORRAについてはPR TIMESの記事を是非ご覧ください。)
1.作品概要
私は「Living Hakoniwa」というリアルタイムに動作する生態系シミュレーション作品を制作しました。
自然に存在する食物連鎖や循環サイクルからインスピレーションを受け、人工生命を設計し、トライアンドエラーを繰り返し、1つの生態系を作り出す事が出来ないか模索する試みです。vimeoに作品キャプチャ映像がアップされているのでご覧ください。
コンセプト
幼少期の頃、アリの飼育にひどく心奪われていた体験が今回の制作に大きく影響しています。土を入れた瓶の中に、近所で捕まえた蟻を数匹入れて、黒画用紙で包み一晩寝かせるとアリたちが壁と勘違いして巣を掘り始め、翌朝には巣穴が少しずつ出来上がっています。その工事風景、物語性に強く惹かれて以来、群衆や生物らしさをキーワードに制作を行ってきました。以下がその習作映像となります。
今回の展示会に向けて制作を行ったのが、一つの箱庭の中で自然の循環、弱肉強食が成り立つことが出来れば、一つ面白い試みになるのではないかと思い計画を立てました。以下のラフ画では”天気”などの環境要因についても触れていますが、惜しくも今回の作品に含めることはできませんでした。
2.作品解説
2-1 全体構成
森林の食物連鎖などを参考に3つの役割分担を行いました。
草を食べる生物=”消費者”、生物の死骸を食べる土=”分解者”、土の栄養を元に生まれる草=”生産者”の3役は相互に働きかけています。
2-2 登場人物
2-2-1 消費者
中央で蠢いている赤と青の生物は”消費者”です。彼らには寿命があるとともに生殖する能力もありますし、地面から生えてくる草を食べて生きながらえます。赤がメス、青がオスであり、生殖が成功する確率はランダムですが、人口爆発が起こらないようにある程度閾値は低く設定されています。
2-2-2 分解者
消費者が死に絶えた時に土からパクパクと現れるのが”分解者”です。分解者が消費者を分解する度に土の栄養パラメーターは溜まっていきます。
2-2-3 生産者
土の栄養パラメーターがある程度貯まると、その栄養を消費して緑色の草が発生していきます。逆に十分な土の栄養が足りていないと草は発生せず、消費者も栄養不足で死に絶える確率が高まります。
3.技術的な解説
真新しい技術は特に使っておらず、機械学習のような要素も使用していないため基本的に彼らはルールとランダムベースで物事を判断しています。あくまでも単純なルールで細部が動きつつ、全体で見たとき複雑さを感じる、あるいは生き物らしく感じてしまうという事が個人的には面白い点なのではないかと考えています。
生物の足の動きをどうしても昆虫のような節足動物の持つ動きを行いたかったためFast IK という無料アセットを今回使用しました。このライブラリを用いる事で足のジョイント制御IK(inverse Kinematics)を簡単に操作することができました。興味のある方は是非試してみてください。
4.展示を行ってみて
実際に展示を行ってみて、ひと目にコンセプトである食物連鎖のような循環が行われているとは伝わりづらい印象であったものの、止まることなく動き続ける生物を観て読み解こうと、しばらく眺めてくださる方が多かったです。
一通りの説明を行うと、こういう機能、こういう動きがあるとさらに楽しくなりそう、など生命設計の面白さに共感してくださることもいらっしゃいました。
とはいえ、循環する仕組みの可視化、わかりやすさ、情報ビジュアライズの仕方に課題を感じたため、今後に向けてさらなるアップデートが出来ればと思います。
以下告知となりますが、東京都渋谷区初台にある”NTTコミュニケーションICC”の「ICCアニュアル2022 生命的なものたち」にて「かぞくっち」というデジタル人工生命NFT作品を展示しているため、よければ是非お越しください。入場無料エリアでの展示のため、お気軽にお越しください。