お久しぶりです!VD部CGデザイナー/モーショングラフィックデザイナーのみやうち(@miya_kosuke)です。
今回は2025年5月まで長崎グラバー園で行われていた「明治夜宴」というイベントのモーションロゴについて書いていきたいと思います。
▲完成品
企画内容について
こちらは弊社worksの方から引用させていただきます。
世界遺産としても知られる「旧グラバー住宅」を含む、長崎の観光名所「グラバー園」開園50周年を記念した期間限定特別イベント「明治夜宴〜マダム・バタフライ ひかり咲く夜〜」のコンセプト立案から体験設計及び、一貫した空間演出・設計、映像制作を含むイベントの総合演出を担当いたしました。
「明治夜宴」は、通常は夜間閉園している園内を開放し、明治時代の長崎が舞台になった世界的に有名なオペラ「マダム・バタフライ」をテーマにした光と映像、音楽、そして食が調和するアートイベント。世界遺産旧グラバー住宅、重要文化財旧リンガー住宅などグラバー園本来の美しさ、魅力を引き立たせる照明演出と、最新のデジタルテクノロジーを使った没入型演出により、明治時代の長崎をイメージした異国情緒あふれるジャポニズムの世界観を作り上げました。
オペラ「マダム・バタフライ」をテーマにしていることがメインです。詳細まで語り始めると企画についてのお話になっていってしまうので、気になった方はよければworksの方も見ていただければ幸いです!
長崎グラバー園開園50周年記念 明治夜宴〜マダム・バタフライ ひかり咲く夜〜
尺はどうしよう?
必ず~秒という指定はありませんでした。CIのモーションロゴなどであれば5秒、3秒あたりですが、メディアの指定が特にありませんでしたので、使い方も演出もこちら次第といったところでした。
尺が特にないとはいえ、企画内容は決まっていますし描くべきことは頭に入っておりましたので、演出内容から10秒で決定しました。
ビジュアルディレクションとモーションデザインでなんとかする
モーションロゴを作るとはいえ支給されているのはロゴデータの文字のみです。イベントの内容に沿った演出をしたい場合は、何かを足す必要がありました。
お花や蝶など具体的なモチーフの多い企画だったので、それらを使っていくことは明確でした。ただ、その場合ビジュアルの素材をどうしようというところから考える必要があり、その時点から動かすことを念頭に、ひとりで完結できる表現がどこらへんなのかを探りました。
花のデザイン
花弁1枚1枚を手で動かし開くモーションをつけるのは微調整やデザインの修正が起きてしまった場合大変ですので、モデリングからMoGraphで対応します。
花そのもののモデリングにかける時間よりも、動きのところにウェイトを置きたいので、平面にテクスチャを貼りそれをBendで曲げることでうまくそれっぽく花を作る方法で解決します。
まずはストック素材からいくつか使いやすそうな花弁のテクスチャを見繕います。
●ストック素材から集めた花弁をずらっと整列させたもの

下段の方にある花弁は比較的正面で撮影されていたり使い勝手がよさそうなので、こちらをアルファで書き出して使います。
色については、コンポジットでどうにかする予定だったので現段階では気にせず進めていきます。
●平面をBendで曲げて花弁っぽい形状に

●MoGraphで円状に配置

●Stepエフェクターで回転やスケールを加えて薔薇っぽく見えるように調整


花のモデリング部分はここまでです。ここからアニメーションに入ります。
アニメーションについて
花をどう作るかについての仕組みはできたので、ここから動かしに入ります。とはいえ、花の作り方段階で戻りやすかったり、なるべく時間をかけないMoGraphを使った動かし方で先にイメージしていたので、後は実際に手を動かしていくだけです。
1枚の面をBendで曲げつつ、Planeの幅や高さにもアニメーションを入れます。
●花弁のひとつが開くアニメーション

●Stepのタイムオフセットで中心部の開くアニメーションタイミングを調整

開くアニメーションはこちらで一通り解決しました。
コンテは都合上載せられていませんが、この後花に散る動きを付ける必要があります。
散る動きをどう作るか
水面に浮かんだ薔薇に蝶がとまり、ハラハラ~と崩れていくイメージですが、外側の花弁から1枚ずつ剥がれる動きがMoGraphエフェクターでうまくいくかの不安がぬぐい切れていませんでした。
花弁のふくらんでいる側が水面に接地するまで、それぞれ回転角が個別に異なります。(下記図参照


平面をBendで曲げるアニメーションがついていたり、それらをMoGraphで複製しているため、外側の花弁から綺麗に剥がれ接地面に傾いていきながら放射状に滑る動きを、MoGraphエフェクターだけで再現できるイメージが湧きませんでした。
戻りやすい作り方をなるべく心がけるとはいえ、イメージが湧かないままエフェクターで試行錯誤している時間より、さっさと手付けにしてしまった方が短縮できると信じ、散るアニメーションについては手付けで行こうと舵を切りました。
花弁を1枚ずつ動かす
MoGraphなどのジェネレーターは、Cキーで編集可能なオブジェクトにすることができます。まずは個別にオブジェクトの軸を調整します。
●開くアニメーションの時の軸位置。エフェクターなどでスケールや角度の調整をする際扱いやすいように花弁の下あたりに軸をもってきている

●この軸を花弁の中心 / ふくらみの頂点あたりにもってくる

●外側の花弁の軸を可視化したもの

これらを1枚ずつ調整していきます。この準備が完了すればあとは手付けで動かすのみです。
●外側の花弁から、少しずつキーフレームをずらしていくことで綺麗に1枚ずつ剥がれたかのように見せる

下準備はこれにて完了です!これらをレンダリングし、コンポジット作業へ入っていきます。
コンポジット
コンポジットや蝶のアニメーションについては、デザイナーごとに作る順番ややりやすい方法が変わってくると思いますのでなるべく短くまとめます。
●蝶のアニメーション
最初にどのように飛んでくるかを決め、羽の動きを調整していきます。なめらかに舞うところはあまり羽を動かさないようにしたり、とまる直前は羽がよく動くようにするなど。本物の蝶が舞っている様子の映像などをリファレンスに、違和感がなくなるようにしていきます。


●ロゴ部分のアニメーション
黒いインクが広がるような静止画・動画素材を重ねていくことでロゴが見えてきます。

●散った花弁が段々消えていく箇所
花弁1枚ずつにオブジェクトバッファを付け1枚ずつアルファで抜いています


▼完成!
まとめ
いかがでしたでしょうか。コンポジットに入って以降急にブログのボリュームが減っていますが、案件を進めていた時も実際その通りで、時間がかかっていた箇所は花の部分がほとんどでした。笑
花が咲く・開くMoGraphアニメーションはチュートリアルが世の中にたくさん出ていますし自分でも作りのイメージが湧いていましたが、散る動きに関してはエフェクターのみでどうにかする方法が思いついていませんでした。そういった時に、戻ることは一旦忘れ手付けに移る判断をするのは大事かもしれないですね。
以上になります!お読みいただきありがとうございました!