3DCGデザイナーの中嶋です。

Hand Trackingで指の位置・向きに合わせて敵を狙い、マイクに向かって「バン」や「ダダダ」と声を出すと、機械学習を応用した音声認識を使ってその声に応じた異なる弾を発射するリアル指鉄砲ゲーム「Cyber Bang」をワントゥーテンで制作いたしました。

Cyber Bang 体験の様子


「Cyber Bang」の詳細はこちらの記事をご覧ください

今回はこの「Cyber Bang」というゲーム機能の土台があるコンテンツの、見た目に関わる部分の制作の進め方について備忘録的に描きたいと思います。


ボスの造形とステージについて


下準備

デザイン前のプロトタイプの画面

シューティングゲームということで、最初の段階では荒廃した荒野で銃を撃つ、という画面作りをしていました。体験として出来上がっているこの状態から、見た目に関わる要素を抜き出して全体の雰囲気を考えていきます。

要件として最終的なターゲットが子供であり、昨今の情勢のこともあって現実的な描写にならないように気をつけました。

上の点を考慮して表現方法を探りながら、リアルな時代設定ではなくカラフルで楽しげでもあるサイバーパンク的な方向性で制作することにしました。

まずは簡単なスケッチを描きました。見た目部分の雰囲気や設定を考え、テーマがわかるような色味やモチーフ(ネオン街、夜など)を書き込んでいます。

ボスに関しては、まずゲームの機能に関わる要素を説明しました。

  • 体に光る部分があり、そこを撃つと光が消えて攻撃を無効化できる
  • 上半身だけ、壁から乗り出すような体勢で留まり、その地点から動かずに攻撃を仕掛けてくる

など、ある程度ゲーム内のストーリーを作りながら画面作りを考えていきます。


ボスの造形について


このボスは定点に居座って腕で薙ぎ払う動作をしたり、火炎放射を仕掛けてくるなど攻撃的な性格をしているので、その生態(攻撃方法)にふさわしい造形を目指しました。

頭部のベースモデル

これといったモチーフはありませんが、オオカミの頭や蛇など実在の動物の造形を取り入れて形にしています。日本の妖怪でいうところの「鵺」あたりが近いかなと思います。

ぬえ【鵼・鵺】

  1. 正体がつかめない、はっきりしない物事・人。
  2. 伝説上の怪獣。頭は猿、手足は虎(とら)、体は狸(たぬき)、尾は蛇、声は虎鶫(とらつぐみ)に似ている。

灯りの乏しい時代に、暗闇から覗く得体の知れないものに対して「妖怪」という形を与えた昔の人の想像力や表現は、ボスの造形制作のヒントになりました。

ゲームコンテンツを作る際、「敵」という存在を何者でもない形にすることによって、現実世界に敵意が向かないようにすることもクリエイターの役目ではないかと、一個人として感じています。このゲームは文字や声がキーになっているので、言葉で表せないあいまいな造形を「敵」として形作ってみました。もちろん、まだまだデザイン的に詰める余地があるのでこれが正解ではないと思っています。


ボスが纏うネオンの模様について


サイバーパンクな雰囲気がテーマなので、ボスにはネオンを纏わせようと初期の段階から考えていました。

まず、ボスの大物感を出そうとか、人智を超えているような強敵のイメージにしようと↑のような細かい文様のテクスチャを用意してみました。しかし、このような装飾は本来人が立ち向かうべきではない「畏れ」や「神聖なもの」の象徴として用いられることが多く、さらに文様一つ一つに意味があると気付いたため(見よう見まねのそれっぽいデザインであっても)、また「敵」というイメージにも合わなかったので没にしました。

ネオンについてはかなり迷走し、最終的に頭部のラインに沿うような、含みを持たせないシンプルな表現に落とし込みました。

実際のネオン

今回は時間があまりなかったこともあり、ボスの攻撃に関わるところの造形を中心に制作しました。実はもっと腕があるとか、羽が生えているとか、今後はゲーム機能に関わらないところにも焦点を当ててデザインを突き詰めていけたらと思います。


ステージについて


ゲームステージはすべてUnityで組んで調整しています。

明るさについて

ボスが出現した際にネオンが目立つほどよい暗さと、ボスのシルエットが一番暗く見えるような明るさに調整しました。

画面の構成について

色数を抑えたシンプルな画面構成にしつつ、サイバーパンク世界の煩雑な雰囲気を保ちたかったので、情報量が多いリアル目なビルのアセットを遠景に配置しています。その作業と同時に、背景オブジェクトを2Dグラフィック調に見せるため、DoFとFogを強めにかけて奥行き感を表現しています。

また、手前にシンプルな地面オブジェクトを配置することで、リアルな背景オブジェクト、デフォルメが効いた敵キャラ、UIとのトンマナバランスを調整しています。

今回は円形のステージ構成にしており、カメラを段階的に回転させることでステージが遷移します。これによって実質1ステージ分の背景制作だけでも機能するようになっています。

時短のために取った方法なので、このあたりの演出についても今後突き詰めていきたいですね。


UIデザイン


デザイナーの村井です。今回ロゴ・UIデザインを担当させていただきましたので製作の流れをご説明させていただきます。

世界観のトーン選定から入り、着地したいビジュアルの構想を固め、「かわいくしたい!」という声があったので「かわいい」の共通認識を合わせていくために、いろんな可愛いの方向性とコンテンツとの相性の可能性を探りました。

かわいいリファレンス

可愛いの中でも割とクールなサイバーパンクな世界観に意見が固まり、中嶋さんからゲームステージイメージの初校が上がってきた段階からUI製作に入りました。シューティングゲームや、FPS系のゲームのUIを参考にしています。

待機画面
プレイ中
リザルト

量販されているゲームにはあまり無いようなトラッキングを用いたゲームだったので、首を傾けると敵からの攻撃を避けることができるという要素がUIで表現することが難しかったです。

実装的に顔の横移動の表示だけだったので、最終的に顔のアイコンにX軸とY軸を設けて真ん中のX軸に対して顔がどれだけ横に移動できているかという見せ方にしました。

今何の銃を使用しているのかが分からなくなるので、UIを銃弾と同じ色を使用することと、銃のビジュアルをUIに入れました。

銃弾に制限がありリロードという仕組みがあったので、銃弾が無くなった場合は、透過にすることにより使えないことを表現し、銃弾のエリアにリロードのバーが走るようにしました。


ロゴデザイン


コンテンツ名が中々決まらなかったので、ゲーム内容の要点を伝えてChatGPTに考えてもらいました。

最終的にサイバーパンクな世界観と銃のバングを掛け合わせた「Cyber Bang(サイバーバング)」に決まりました。

タイトルにもあるサイバーっぽさと全体的にクールなイメージに固まったのでクールな雰囲気と可読性を意識して製作しました。

初期ロゴデザイン

コンテンツの主である指鉄砲とマイクが欲しいとの修正依頼から、直接的なマイクのモチーフを入れるのではなく声の波形に変換し、ボイスが銃弾になっているイメージにしました。

最終ロゴデザイン

案件等でゲームのUIデザインを担当させていただくことがあまりなかったのでデザインの幅が広がる良い機会になりました。特に、機能的で利用者が直感的に操作できるUIを作ることは大きな課題でしたが、今後もこの目標を掲げて取り組んでいきたいと思います。


まとめ


2Dと3Dの双方で、デザインの基盤を一から構築することは新しい試みでしたが、良い経験となりました。デザイン面においては、取り組みたい課題がまだまだ残っており、次の挑戦に生かしていきたいと思います。

ぜひ機会があれば実際に体験してください!



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