CGデザイナーの川村(@tsumiki_room)です
TouchDesignerに新しく「POPs」というファミリーが加わりました
今回はPOPsの面白さとおすすめの始め方を紹介します
1️⃣POPsってなに?
POPs(ポップス/Point Operators)は、TouchDesignerのExperimental(実験的)ビルドで使える新しい仕組みです(2025年6月現在)。
POPs-A new Operator Family for TouchDesigner
名称から受ける印象はUnityのVFXgraphやUEのNaiagaraといったパーティクルシステムを連想させますが、単なるパーティクル演出のための機能ではありません。
その本質はむしろ、「アトリビュート(属性/Attribute)」を中心としたジオメトリやポイントの制御を、より自由で柔軟に扱える新しい仕組みにあります。
各ポイントがもつ色、大きさ、位置、回転、寿命などの情報を、ノードベースで組み合わせながらリアルタイムに制御できる構造は、従来のSOPの発展形であり、GPUベースで動作するTOPの3D拡張のような感触もあります。
たとえば、これまでHoudiniなど外部ツールでしか生成が難しかった属性の割当てやプロシージャルなモデル制御もTouchDesignerの中だけでより動的に、属性ベースで細かく作り込むことが可能になります。
また、ワークフローがGPUベースになったことで、geoCOMPを軸とした従来の”複製して並べる”という発想から一歩進み、個々のオブジェクトごとに異なる振る舞いをさせるような制御も簡単におこなえるようになりました。
つまりPOPsは、パーティクルという枠を超えて、属性ベースで動くジオメトリ制御の新しい核として機能するポテンシャルを持っています。
2️⃣POPsでできること
POPsを使ってどんな表現が可能なのか、TouchDesigner公式で公開しているLearning About POPsのPOPs Ecamples Packageからいくつか紹介します。
- 空間内の特定の領域を指定し、その中でポジションとカラーの属性を変化させることで、地形のような立体的な表現を生成しています。
- 範囲ごとに異なる設定を割り当てることで、メッシュの描画方法を変化させています。
- キューブをグリッド状に配置し、それぞれに個別の色と動きを割り当てています。
- スフィアとキューブの形状を、滑らかに変形させながら切り替えています。
- 3D Gaussian Splatting(3D空間にぼかし点群を配置する技術)の描画。
このように、TouchDesigner単体では難しかった高度なビジュアル表現も、POPsによって柔軟に構築できるようになりました。
3️⃣おすすめの教材
POPsは実験版のリリース間もないため、現時点では公開されている資料が限られています。本記事では、その中でも信頼性の高いおすすめリソースをご紹介します。
POPs Wiki
情報がまだ出そろっていない部分もありますが、一覧で見やすく、各オペレーターの説明を読むだけでもかなり参考になります。
“現在、Experimental 版タブに情報が掲載され始めた段階で、まだ完全とは言えません “とのことですが、ドキュメント化は順調に進んでいるそうです。
Learning About POPs
TouchDesigner公式によるPOPsのドキュメントです。
今後も数ヶ月かけて充実していく予定だそうですが、現時点でもすでに機能ごとの詳しい解説が含まれており、非常に参考になります。
POPs Examples Package
公式がリリースしているサンプルファイルです。
現在、最も参考になるプロジェクトファイルのひとつです。
一部にエラーが見られるものの、今後の継続的なアップデートによって改善されていくと思われます。
詳細については、このあと改めてご紹介します。
4️⃣サンプルファイルのみかた
POPs Examples Packageについて見ていきましょう。

■おすすめ1━━POPGuide
各オペレーターを、具体的な作例とともに一覧で確認することができます。
TouchDesignerでオペレーターの使い方を調べる際に、HelpメニューからOperator Snippetsにアクセスして動作を確認することがあると思いますが、
これはまさにそのPOPs版ともいえるもので、GUIを含めたインタラクティブな操作性の中で、各オペレーターを実際に触りながら学ぶことができます。

オペレーターを選択して、この”Show network”をクリックするとネットワークを確認することができます。
■おすすめ2━━Overview
POPsの重要な機能を個別にPOPsの主要な機能を個別に取り上げ、ノードネットワークを通じてわかりやすく解説しています。
例えば、最上段の左から2番めにある“generators”に入ってみると、プリミティブオブジェクトやポイントの生成などのオペレーターが解説付きで確認することができます。

このほかにも、よく使うオペレーターの解説や、見落としがちなBuilt-in AttributeやSwizzlingのまとめなど、非常に興味深い内容がそろっています。
技術的につまずいたときの助けになるのはもちろん、読み物としても楽しめる構成になっています。
5️⃣その他━ためになったもの
すでにたくさんの動画チュートリアルが上がっています。
■[TD News #02] Start with POPs – TouchDesigner Tutorial
この動画では、TouchDesignerの新しいPOPsノード群を使った基本的なネットワーク構築を通して、その特徴と活用法がわかりやすく紹介されています。
■Our first interactive POP particles in #touchdesigner
particle POPとnoise POPを使った基本的なパーティクルの制御方法に加え、trail POPによる軌跡の描画、さらに画像や動画をPOPネットワークに取り込む方法まで、丁寧に解説されています。
■Physics in TouchDesigner POPs (Experimental)
POPsでバウンスや落下といった物理っぽい動きを作る方法が紹介されています。
MathMix POPを使って関数やアトリビュートを組み合わせていく過程は、POPsらしい試行錯誤の楽しさがよく伝わります。
細かい部分までわからなくても、動きや雰囲気を感じるだけでも学びがある動画です。
6️⃣さいごに
POPsは、TouchDesignerに新たな可能性をもたらす、とても魅力的で革新的な機能です。
パーティクルの演出にとどまらず、アトリビュートベースでのジオメトリ制御や複雑な動きの構築を、これまで以上に柔軟かつ直感的に行うことができます。
とはいえ、まだExperimental(実験)版としての公開段階であり、ドキュメントやチュートリアルも整備中です。
今後のアップデートによって、機能や情報の充実がさらに進んでいくことが期待されます。
いまの段階で触れてみることは、変化の最前線に立つ体験でもあります。ぜひこの機会にPOPsに触れてみてください。
そこには、これまでにない表現や制作のヒントがきっと待っています。
こういうすごい使い方をする人もいます。
ちなみに「この Experimental ブランチを 2025年秋(早ければ9月)までに公式リリース版へ移行する予定です」とのことです
Experimental Build 2025.30060 posted