こんにちは、CGデザイナーの高睿(こう えい)です。

現実の時間と空間を完全に記録し、自由に探索できる技術は存在するのか?

任意の視点で好きなタイミングで、思い出や過去の瞬間を自由に再体験できたら─その夢を現実に近づける映像技術が、3Dガウススプラッティング(Gaussian Splatting)です。

3D Gaussian Splattingとは?

従来の3D世界は、三角形ポリゴン(メッシュ)によって構成されており、面数・テクスチャ・ライティングの組み合わせでリアルな映像を作り出してきました。

しかし、ガウススプラッティングは全く異なる仕組みで、世界は無数のガウス楕円(ガウススプラッツ)と呼ばれる小さな粒子によって構成されます。それぞれの楕円体は柔らかい境界を持ち、回転・スケール・移動が自由自在。方向によって色や輝きが変化する特性もあり、それらが重なり合うことで、非常にリアルで滑らかな空間が形成されるのです。

なぜ魅力的なのか?

ガウススプラッティングの最大の魅力は、可視性・可変性・自己最適化能力にあります。

例えば、従来のフォトグラメトリ(写真測量法)は一度モデルを生成した後はほとんど修正ができませんでした。しかし、ガウススプラッティングでは、元の画像データとの誤差を自動的に比較し、何度も微調整を重ねることで、現実に限りなく近い仮想空間を構築できます。

また、光の屈折・反射の表現にも強く、ガラスや毛並みといった複雑な質感の再現において、従来の三角形ポリゴンより大きく上回る表現力を発揮できます。

応用の幅広さ:文化財からデジタル映画制作まで

🔸 文化遺産のデジタル保存

たとえば中国の雲崗石窟では、ガウススプラッティングを用いて千年以上前に彫られた石窟内部の空間を高精度で再現。ユーザーは自由な視点で探索できるデジタルミュージアム体験を可能にしました。

🔸 舞台芸術の立体記録

北京師範大学舞踊学部の舞踊パフォーマンスを4Dガウスで記録。自由視点での再生、スローモーション、背景の差し替えなど、既存の撮影技術では不可能な編集が可能になりました。

🔸 映画・CMなどの映像制作

「バレットタイム」のような視点移動効果は限られた角度しか動かせませんが、上記のようなガウススプラッティングなら空間×時間の両軸で完全自由なカメラ操作が実現。複雑な機材なしでも、圧倒的な臨場感を持つ映像を制作できます。

モバイルでも高精細に再現できる軽さ

これほど複雑なガウス空間は、ハイスペックPCを必要がありません。

GPUを搭載した(ノートPCも可能)端末で、数百万ポイントの高密度ガウスシーンをリアルタイムで描画・確認可能です。

現場での確認作業や撮影効率が飛躍的に向上し、クリエイターにとっては非常に大きな武器になります。

(こちらで体験してみよう。)

未来への期待:あなたの記憶が「探索可能な空間」に

ガウススプラッティングの応用は、個人レベルにも広がろうとしています。もしかすると近い将来、スマートフォン1台であなたの思い出の瞬間を丸ごと空間に記録し、あとから自由な視点で“再体験”できる時代が来るかもしれません。

卒業、恋愛、家族旅行──過ぎ去っていく人生の1ページを、もう一度、別の角度から見つめ直すことができます。それは、かつてない感動体験になるでしょう。

弊社ワントゥーテンでも、自社コンテンツであるデジタルツインプラットフォーム「QURIOS FIELD」を用いて、3Dガウススプラッティングを用いた空間をプロトタイプしています。

Capture Data Created by @Koto3D with Luma

まとめ

3Dガウススプラッティングは、「映像・空間」という物の可能性を再定義しようとしています。

近い将来には、この技術を活用してVRヘッドセットを装着することで、さまざまな視点や時間のスピードで、過去のリアルな記憶を再び体験でき、より感動的なものになると思います。

 

(*画像素材の一部はこちらの動画からです。*)



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